
2026年2月27日、住宅・インフラ商材の専門商社「渡辺パイプ株式会社」が創業以来初となるテレビCMを全国放映スタートしました。
人気お笑いコンビ・オードリーさんの若林正恭さんと春日俊彰さんが出演し、バグパイプの衣装で現場を行進しながら「渡辺パイプ」と社名を歌い連呼するという強烈なインパクトのCMは、ネット上で賛否両論を巻き起こしています。
「ダサい」「うざい」「頭から離れない」「好きになった」——果たしてこのCM、マーケティング的には失敗なのか、それとも大成功なのでしょうか?
目次
渡辺パイプCMの基本情報と炎上の全容

このCMはどんな内容か
渡辺パイプは創業から一度もテレビCMを出稿したことのない企業でした。そんな同社が満を持して世に送り出したのが、「ススメ、現場の最前線。」という30秒のテレビCMです。
内容はいたってシンプル。若林正恭さんと春日俊彰さんがバグパイプの衣装に身を包み、渡辺パイプのさいたま中央営業所や工事現場の中をまるで楽隊のように行進します。BGMは誰もが知る名曲「聖者の行進(When the Saints Go Marching In)」。そしてその曲に乗せて「渡辺パイプ」という社名が何度もリズミカルに歌われます——これが視聴者にとって「連呼がうざい」「耳から離れない」と強烈な印象を残す最大の要因となっています。
さらに、CMはWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)のNetflix中継という超大型イベントで大量放映されたことで一気に認知が拡大。「WBC見てたら何度も流れてきて嫌いになりそう」という声が続出するほどの露出量となりました。
| 企業名 | 渡辺パイプ株式会社(セディアグループ) |
|---|---|
| 商品・サービス名 | 企業ブランドCM(水・住まい・農業分野の専門商社) |
| 出演者 | 若林正恭さん(オードリー) 春日俊彰さん(オードリー) |
| CM放送開始時期 | 2026年2月27日(金)〜 全国放映開始 |
| CM篇名 | 「ススメ、現場の最前線。」篇 |
| 使用楽曲 | 聖者の行進(When the Saints Go Marching In)アレンジ版 |
なぜ今テレビCMに進出したのか
渡辺パイプさんが今回テレビCMに踏み切った背景には、2023年4月からニッポン放送「オードリーのオールナイトニッポン(ANN)」への番組提供・ラジオCM出稿で積み上げてきた確かな手応えがありました。ラジオCM時代からすでに「渡辺パイプ」という社名をリズムに乗せて繰り返す手法を採用しており、その認知拡大効果を確認した上での、満を持してのテレビ進出です。
広報担当者が「採用活動の場面で学生から『ラジオで知りました』という声が増えた」と語っており、BtoB企業がBtoCメディアを活用してブランド認知を高めるという戦略がすでに実証済みだったことがわかります。
「ダサい」「うざい」「うるさい」——否定的意見と肯定的意見の実態

否定的・批判的な意見
- 「渡辺パイプ」という社名を繰り返し歌うのがとにかくうるさい・うざいと感じる
- 「聖者の行進」に社名を乗せただけのシンプルすぎる構成がダサいと感じられている
- バックに流れるBGMに不協和音のような音が混じっており、それが気になるという指摘(YouTubeでは「癖になる」という声も)
- WBCのNetflix中継で頻繁に流れすぎて、繰り返し見るうちに嫌いになった
- 何を伝えたいのかがわからない、BtoB企業のCMとしてメッセージが薄いという意見
- バグパイプという楽器を選んだ理由が「パイプ」繋がりという点だけで、コンセプトが安易だと感じる
渡辺パイプのCMバグパイプの曲調に合わせてなんだろうけど下の音が変わんなくて気持ち悪すぎるのでもう一生流れてこないでください
— くろみさ (@685misalajenro) March 11, 2026
渡辺パイプって上場してないのかよ
なんなんだあのCM連打は— G-PRIDE (@WACHSENRIDER) March 10, 2026
渡辺パイプって何の会社?
WBCのCMで費用対効果はどうなん?#WBC
— 【初代】青いスタッフ☆☆☆⭐⭐ (@magokorotour) March 10, 2026
NetflixのWBC中継。。
「渡辺パイプ」のCMがウザくなってきた。。
洗脳のように見せられると不快やな。。#Netflix— KAZUHIRO (@ITCHAN0510) March 10, 2026
渡辺パイプのCM不快すぎる
— shiba NO WAR (@paypay20201210) March 10, 2026
肯定的・好意的な意見
- 「聖者の行進」のテンポ感が気持ちよく、気づいたら口ずさんでいた
- オードリーさんらしいシュールさが出ていて面白いという声
- 「オードリーのANN」リスナーにとっては待望のテレビCM化として大歓迎
- 現場で働く社員さんたちの姿が映り、会社の実態が伝わってくる温かみがあるという意見
- 「ダサいけどなんか好き」という、いわゆる”愛されるダサさ”として受け入れている層も一定数いる
- CMが終わった後も「渡辺パイプ」という名前だけは確実に覚えられる、という点で優秀という評価
https://twitter.com/AORINGO_weather/status/2031342008988840020
https://twitter.com/PHILOSOPHY627/status/2031356268405993940
渡辺パイプ
リトルトゥースなら馴染みのCM
オードリーを使う所が分かってる— keita (@keitapb2) March 10, 2026
渡辺パイプのCM戦略を深読みする——「なぜ意図的にダサいのか」

「聖者の行進」×社名連呼——耳残り設計の巧みさ
まず着目すべきは、BGMに「聖者の行進」を採用した点です。この楽曲は誰もが生涯で数十回以上耳にしてきた普遍的なメロディであり、「耳になじんでいる」という前提があります。そこに「渡辺パイプ」という社名を当てはめることで、初見でもリズムに乗って自然に脳内再生されるという設計になっているとみられます。
音楽認知の観点では、人は繰り返し聴いたメロディを容易に想起する性質があります(いわゆる「イヤーワーム」効果)。CMで「うるさい」「連呼がしつこい」と感じた視聴者が、その後ふとした瞬間に「渡辺パイプ〜♪」と頭の中で再生してしまうなら、それこそが狙い通りの効果といえるでしょう。
バックに流れる「あの音」は意図的な仕掛けか
SNS上でたびたび話題になるのが「バックに流れる不協和音みたいな音が癖になる」という声です(YouTube視聴者コメントより)。バグパイプという楽器そのものが持つ特有のうなり音と、「聖者の行進」のメロディラインが重なり合うことで生まれるこの独特のサウンドは、聴く人によっては不快であり、一方で「なんか妙に引っかかる」という中毒性の源になっているようです。
完璧に整えられた音ではなく、どこか生々しさのある仕上がりにすることで記憶への引っかかりを作り出しているとすれば、それは偶然ではなく一種の演出上の判断である可能性があります。広告業界には「完璧すぎるCMは素通りされる」という経験則もあり、若林さんと春日さんの「真剣にやっているのに少しシュール」という空気感とも非常に親和性が高いといえるでしょう。
競合との差別化——BtoBインフラ企業のCM史的文脈
渡辺パイプさんが属するのは、一般消費者にとってほぼ名前を知られることのないBtoB専門商社という業種です。水道管材・住宅設備機器・農業資材などを扱う同社の直接顧客は建設業者や設備工事会社であり、一般消費者がこのサービスを直接購入することはありません。
にもかかわらずテレビCMを打つ理由として、採用ブランディングと社員・取引先へのエンパワーメントという二つの目的が大きいと推察されます。「現場で働く人たちに誇りを知ってほしい」という制作側の言葉からも、対外的な商品PRにとどまらず、社内の誇りや一体感の醸成という内向きの効果を重視している側面がうかがえます。
WBCという場での大量放映は失策か
「WBCで流れすぎてうんざり」という声は多くあります。しかし一方で、WBCというスポーツイベントは、平均的なドラマや情報番組よりも圧倒的に視聴者の集中度が高い場面です。画面から目が離せない状態でCMが流れることは、通常よりも記憶定着率が高いという研究知見とも一致します。
また、Netflixという配信プラットフォームでWBCを観ていた視聴者層は、比較的若くデジタルリテラシーが高い傾向があります。この層が「渡辺パイプ」という名前をSNSで拡散してくれたことで、CM制作費以上のアーンドメディア(獲得メディア)効果が生まれた可能性があります。
オードリーさん起用の深い意味——ANN文化との接続
オードリーさん、特に若林正恭さんはここ数年で「深夜ラジオ文化の象徴」「30〜40代男性の精神的支柱」として非常に強固なカルチャー的ポジションを確立しています。「オードリーのANN」のリスナーは熱狂的なファン層であり、スポンサーへの親近感も強い傾向があります。
つまり渡辺パイプさんは単に「有名人を起用した」のではなく、ANN文化というコミュニティとの深い絆を3年かけて育ててきた上で、テレビCMという形で”解禁”したわけです。ラジオでファンになった人がテレビCMを見て懐かしさを感じ、SNSで「渡辺パイプのCM来た!」と自発的に発信するというこのサイクルは、通常の企業が新たにCMを打っただけでは生まれない固有の資産だと考えられます。
まとめ——「嫌われながら愛される」が現代CMの最強戦略

「ダサい」「うざい」「うるさい」——渡辺パイプさんのCMに対するネガティブな反応は確かに多くあります。しかし、それらの言葉が飛び交うSNSを冷静に眺めると、「渡辺パイプ」という社名を知らない人は、もはやほとんどいないという現実が見えてきます。
マーケティングの世界には「7回接触の法則」という概念があります。消費者がブランド名を認知し、記憶に定着させるには平均7回以上の接触が必要だとされる理論です。WBCで何度も流れたCMをうんざりしながらも見てしまった視聴者は、すでにその閾値を軽々と超えているかもしれません。
また、現代のデジタルマーケティングにおいては、「話題にされること」それ自体が広告価値を持ちます。批判コメントも感心コメントも、SNSのアルゴリズムには等しく「エンゲージメント」として処理されます。「このCMうざい」と投稿した人が渡辺パイプという名前をネット上に刻み込んでいるという逆説的な構図が、今まさに起きているのです。
BtoB企業が採用ブランディングのためにラジオから3年かけてファンを育て、WBCという国民的イベントで初のテレビCMを大量放映し、批判も含めてSNSで拡散させる——この一連の流れは、緻密に設計されたブランドコミュニケーション戦略として評価できる側面があります。「ダサさ」すらも武器にする。そんなCM戦略の逆説的な強さが、渡辺パイプのこのCMには詰まっているといえるでしょう。




