44年間にわたって日本の音楽シーンを彩り続けてきたポカリスエットのCMソング。
1981年の放送開始から2025年まで、時代を象徴する楽曲を数多く起用し、日本のポップカルチャーに深い影響を与え続けています。
初期のカバー楽曲からビーイング系アーティストの黄金期、そして現在の多様なジャンル展開まで、音楽業界のトレンドを先取りし続ける戦略性は、他ブランドの追随を許さない独自性を確立しています。
今回は、そんなポカリスエットの歴代CMソングを時系列で詳しく紹介し、各時代の音楽的背景と大塚製薬の巧妙なマーケティング戦略を深掘りします。
目次
歴代CMソング一覧
曲名 (アーティスト名) |
使用時期 |
---|---|
まぎれなく恋 (レモン・トリー) |
1981年 |
まぎれなく恋 (チェリッシュ) |
1983年 |
シネマのように(CMオリジナル曲) (ロザンナ) |
1984年 |
DEJA-VU(デジャヴー)(CMオリジナル曲) (杏里さん) |
1985年 |
硝子のレプリカント (早瀬優香子さん) |
1986年 |
センド・イット・トゥー・ミー (ブレット・レイモンド) |
1986年 |
きまぐれSummer Wind (BOUND) |
1987年 |
アイ・フィール ユア・ラブ (BEN E KING) |
1987年 |
CO-COLO上天気 (Mich Bronsnan) |
1989年 |
君が降りてきた夏 (MOJO CLUB) |
1990年 |
Rock and a Hard Place (The Rolling Stones) |
1990年 |
Shiny Day (川島だりあさん) |
1991年 |
いつまでも変わらぬ愛を (織田哲郎さん) |
1992年 |
揺れる想い (ZARD) |
1993年 |
瞳そらさないで (DEEN) |
1994年 |
突然 (FIELD OF VIEW) |
1995年 |
200倍の夢 (Letit go) |
1995年 |
心を開いて (ZARD) |
1996年 |
エスケープ (Dr.StrangeLove) |
1997年 |
さまよえる蒼い弾丸 (B’z) |
1998年 |
夏の魔法 (ペパーランド・オレンジ) |
1998年 |
GOING TO THE MOON (TRICERATOPS) |
1999年 |
Sunny Day Sunday (センチメンタル・バス) |
1999年 |
Brand New Wave Upper Ground (JUDY AND MARY) |
2000年 |
ミュージック・アワー (ポルノグラフィティ) |
2000年 |
サウダージ (ポルノグラフィティ) |
2000年 |
あたしをみつけて (JUDY AND MARY) |
2001年 |
スカート (CHARA) |
2001年 |
Free World (LOVE PSYCHEDELICO) |
2001年 |
travellin’ man (玲葉奈さん) |
2001年 |
SONS OF THE SUN (麻波25) |
2002年 |
それがすべてさ (福山雅治さん) |
2003年 |
RED×BLUE (福山雅治さん) |
2004年 |
未来 (Mr.Children) |
2005年 |
ハネウマライダー (ポルノグラフィティ) |
2006年 |
SMAP No.5 (SMAP) |
2007年 |
一粒大の涙はきっと / だから一歩前へ踏み出して (Hi-Fi CAMP) |
2009年 |
生きてゆくのです♡ (DREAMS COME TRUE) |
2010年 |
ネルマレ 〜After long tomorrow〜 (toe feat. Maia Hirasawa) |
2010年 |
Can’t Take My Eyes Off You (Boys Town Gang) |
2012年 |
GANRYU (MIYAVI vs HIFANA) |
2012年 |
Walk with Dreams (Dragon Ash) |
2012年 |
ドント・ウォーリー・ビー・ハッピー (斉藤和義さん) |
2015年 |
We Will Rock You (クイーン) |
2015年 |
暑中お見舞い申し上げます (吉田羊さん・鈴木梨央さん) |
2015年 |
care (井上陽水さん) |
2018年 |
木枯しに抱かれて (吉田羊さん・鈴木梨央さん) |
2019年 |
揺れる想い (吉田羊さん・鈴木梨央さん) |
2019年 |
優しいあの子 (吉田羊さん・鈴木梨央さん) |
2020年 |
君に、胸キュン。2020夏バージョン (吉田羊さん・鈴木梨央さん) |
2020年 |
常夏娘 2021夏バージョン「常夏母娘2021」 (吉田羊さん・鈴木梨央さん) |
2021年 |
ひとつだけ (ポカリ母娘with矢野顕子さん) |
2022年 |
瞳を閉じて (ポカリ母娘〈鈴木梨央さんがソロカバー〉) |
2022年 |
サーフ天国、スキー天国 (吉田羊さん・鈴木梨央さん) |
2022年 |
暑さのせい (大滝詠一さん) |
2023年 |
BUNBUN SUIBUN (打首獄門同好会) |
2024年 |
99 Steps (feat. Kohjiya, Hana Hope) (STUTS) |
2025年 |
この一覧から分かるように、ポカリスエットのCMソングは各時代の音楽トレンドを反映しながら、常に先進性を保ち続けています。
1981年から1990年代前半は洋楽カバーやオリジナル楽曲が中心でしたが、1990年代中盤からは国内アーティストとのタイアップが本格化しました。
特に1993年から1996年にかけてのビーイング系アーティスト集中起用(ZARD、DEEN、FIELD OF VIEW)は、J-POP黄金期のポカリスエットを象徴する時代として音楽ファンの記憶に深く刻まれています。
2000年代以降は多様なジャンルとアーティストを起用し、時代の変化に柔軟に対応する戦略性を発揮しています。
時代別CMソング詳細解析
こちらのセクションでは、時代ごとの選曲の特徴を時系列で辿っていきます。
黎明期(1981年-1989年):実験的な楽曲選択
特徴 | 代表楽曲 |
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実験的な楽曲選択 | まぎれなく恋(レモン・トリー/チェリッシュ) |
海外アーティスト起用 | アイ・フィール ユア・ラブ(BEN E KING) |
オリジナル楽曲制作 | DEJA-VU(杏里さん) |
ポカリスエットのCMソング戦略は1981年の「まぎれなく恋」から始まりました。
この時期の最大の特徴は、同一楽曲を異なるアーティストでカバーするという実験的なアプローチです。
1981年のレモン・トリー版から1983年のチェリッシュ版まで、同じ楽曲を異なる解釈で展開することで、楽曲の多面性とブランドの柔軟性を同時に表現しました。
1985年の杏里さんによる「DEJA-VU」では、CMオリジナル楽曲という新たな領域に挑戦し、後のタイアップ戦略の基盤を築きました。
転換期(1990年-1992年):国際的な楽曲導入
特徴 | 代表楽曲 |
---|---|
世界的ロックバンド起用 | Rock and a Hard Place(The Rolling Stones) |
国内アーティストとの連携強化 | いつまでも変わらぬ愛を(織田哲郎さん) |
楽曲制作者への注目 | Shiny Day(川島だりあさん) |
1990年代初頭は楽曲選択の国際化が進んだ重要な転換期でした。
特に1990年のThe Rolling Stones「Rock and a Hard Place」の起用は、CMソング史上に残る画期的な出来事となりました。
世界最高峰のロックバンドの楽曲をCMに起用することで、ポカリスエットのブランド格を一気に押し上げる効果を発揮しました。
同時に、1992年の織田哲郎さん「いつまでも変わらぬ愛を」では、国内の実力派アーティストとの本格的なタイアップを開始し、後の黄金期への布石を打ちました。
ビーイング黄金期(1993年-1996年):J-POP全盛時代
特徴 | 代表楽曲 |
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ビーイング系アーティスト集中起用 | 揺れる想い(ZARD) 瞳そらさないで(DEEN) 突然(FIELD OF VIEW) |
ミリオンセラー楽曲の選択 | 心を開いて(ZARD) |
音楽チャートとの連動性 | 200倍の夢(Letit go) |
1990年代中盤はポカリスエットCMソングの絶対的黄金期として音楽史に刻まれています。
この時期の最大の特徴は、ビーイング系アーティストとの戦略的パートナーシップです。
ZARDの「揺れる想い」(1993年)から始まった一連の楽曲群は、CMソングとしての成功と音楽チャートでの大ヒットを両立させる理想的な循環を生み出しました。(近年の、吉田羊さん&鈴木梨央さんが母娘設定で出演するバージョンでもカバーが行われており、『ポカリと言ったら揺れる想い』ってイメージすら連想してそうな、ポカリと縁のある曲ですね)
特にDEENの「瞳そらさないで」(1994年)は103万枚を超えるミリオンセラーを記録し、CMソングが音楽業界に与える影響力の大きさを証明しました。
FIELD OF VIEWの「突然」(1995年)では、楽曲タイトルとCMのインパクトが見事にシンクロし、多くの視聴者の記憶に深く刻まれる名作となりました。
多様化時代(1997年-2007年):ジャンル拡張戦略
特徴 | 代表楽曲 |
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ロック系アーティスト強化 | さまよえる蒼い弾丸(B’z) 未来(Mr.Children) |
オルタナティブ系の導入 | Brand New Wave Upper Ground(JUDY AND MARY) Free World(LOVE PSYCHEDELICO) |
大型アーティストとの連携 | それがすべてさ(福山雅治さん) SMAP No.5(SMAP) |
1990年代後半から2000年代前半は音楽ジャンルの大幅な多様化が特徴的な時代でした。
この時期の戦略的転換点は、ビーイング系一辺倒からの脱却と、より幅広い音楽シーンへの対応でした。
1998年のB’z「さまよえる蒼い弾丸」では、日本最高峰のロックバンドとの連携により、より男性的で力強いブランドイメージを構築しました。
2000年のJUDY AND MARY「Brand New Wave Upper Ground」や2001年のLOVE PSYCHEDELICO「Free World」では、オルタナティブ・ロックシーンの最前線を取り入れ、若年層への訴求力を強化しました。
2003年の福山雅治さん「それがすべてさ」では、シンガーソングライターとしての表現力を活用し、より情緒的なブランディングを展開しました。
現代的展開期(2008年-2025年):多角的音楽戦略
特徴 | 代表楽曲 |
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インディーズ系アーティスト発掘 | だから一歩前へ踏み出して(Hi-Fi CAMP) 99 Steps (STUTS) |
特別企画楽曲の増加 | 暑中お見舞い申し上げます(吉田羊さん・鈴木梨央さん) 常夏母娘2021(吉田羊さん・鈴木梨央さん) |
レジェンドアーティストとの連携 | care(井上陽水さん) 暑さのせい(大滝詠一さん) |
2008年以降は音楽業界の構造変化に対応した柔軟な戦略展開が特徴です。
この時期の最大のイノベーションは、インディーズシーンからの人材発掘と大御所アーティストとの連携の両立です。
2009年のHi-Fi CAMP「だから一歩前へ踏み出して」では、当時まだ無名だったバンドを起用することで、音楽業界への貢献と話題性創出を同時に実現しました。
2018年の井上陽水さん「care」や2023年の大滝詠一さん「暑さのせい」では、日本音楽界のレジェンドとの連携により、幅広い世代への訴求力を発揮しました。
また、2016年以降(八木莉可子さん以降)のCMでは、『歌+ダンス』を取り入れてるのが特徴的となっており、この流れは2025年までずっと継続してます。
そして、2025年のSTUTS「99 Steps (feat. Kohjiya, Hana Hope)」では、現代的なヒップホップ・プロダクションを導入し、新時代への適応力を示しています。
CMソング戦略の分析
トレンド先取りの卓越性
ポカリスエットの音楽トレンド先取り能力は、44年間の楽曲選択履歴が証明する圧倒的な成果です。
1990年代のビーイング系集中起用では、J-POPブームの到来を予見し、業界をリードする戦略を展開しました。
2000年代のオルタナティブ・ロック導入では、音楽シーンの多様化にいち早く対応し、幅広いリスナー層の獲得に成功しています。
近年のインディーズアーティスト発掘やヒップホップ導入では、次世代音楽文化の創造に積極的に関与し、文化的影響力を維持しています。
アーティスト育成効果の最大化
ポカリスエットのアーティスト育成効果は、音楽業界への最大の貢献として高く評価されています。
Hi-Fi CAMPのような無名バンドの発掘から、既存アーティストのブレイク支援、そしてレジェンドアーティストとの連携まで、音楽業界全体の発展に寄与しています。
特にビーイング系アーティストの楽曲群は、J-POP史に残る名曲として現在も愛され続けており、ポカリスエットの文化的遺産となっています。
この育成効果により、ポカリスエットCMへの楽曲提供はアーティストにとっての憧れとなり、高品質な楽曲の継続的な供給システムを確立しています。
ブランド価値の相乗効果
楽曲とブランドの相乗効果こそが、ポカリスエットCMソング戦略の最大の成果です。
優れた楽曲の選択がブランドイメージの向上をもたらし、高いブランド威信が次なる優秀なアーティストを惹きつけるという理想的な循環構造を構築しています。
この戦略により、ポカリスエットは単なる清涼飲料水を超えて、日本の音楽文化の一部として認識される独特な地位を確立しました。
44年間にわたる一貫した音楽への投資は、他ブランドが容易には真似できない競合優位性を生み出し続けています。
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音楽文化を彩り続ける革新的CMソングシリーズ
1981年から2025年まで44年間にわたって展開されてきたポカリスエットのCMソングシリーズは、日本の音楽史そのものに深い足跡を残す文化的プロジェクトとして、その価値を評価すべきでしょう。
初期の実験的なカバー戦略から、ビーイング黄金期の戦略的タイアップ、そして現在の多角的音楽展開まで、常に時代の先端を歩み続ける革新性は、まさにマーケティングと文化創造の理想的融合と呼べる完成度です。
特に注目すべきは、単なる商品宣伝を超えた音楽業界への貢献姿勢です。
無名アーティストの発掘から大御所との連携まで、音楽シーン全体の発展に積極的に関与する姿勢は、企業の文化的責任を体現する模範的な事例となっています。
また、楽曲選択の的確性も特筆すべき点です。
ZARDの「揺れる想い」やDEENの「瞳そらさないで」など、時代を象徴する名曲群の数々は、現在も多くの人々に愛され続けており、ポカリスエットの文化的遺産となっています。
2025年のSTUTS「99 Steps」に至るまで、常に音楽の最前線に立ち続ける挑戦精神は、他ブランドが到底真似できない独自性を確立しています。
世界的に見ても、これほど長期間にわたって音楽文化に深く関与し続けるブランドは稀有な存在です。
ポカリスエットのCMソングシリーズは、日本のCM史のみならず音楽史においても、企業と文化の理想的な関係性を示す金字塔として、今後も語り継がれていくことでしょう。
次なる10年、20年においても、大塚製薬の音楽への深い愛情と革新的な挑戦精神が、日本の音楽文化をさらに豊かに彩ってくれることを期待せずにはいられません。