日本の頭痛薬市場において絶大な知名度を誇る「バファリン」。その長い歴史の中で、数々の著名女優がCMに起用され、ブランドイメージの形成に大きく貢献してきました。
1980年代から現在に至るまで、時代とともに変化するバファリンのCM戦略と、そこに登場した魅力的な女優たちの軌跡を詳しく振り返ります。各時代の社会背景とブランド戦略の変遷も併せて解説していきます。
バファリンCM出演女優一覧
代目 | 女優名 | 出演時期 | 特徴・位置づけ |
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初代 | 冨士真奈美さん | ~1980年頃 | 草創期の顔・出典限られる |
2代目 | 倍賞千恵子さん | 1980~1990年代半ば | 黄金期の象徴・最長出演 |
3代目 | 中谷美紀さん | 1997年~2000年頃 | 大人の知性と信頼感 |
4代目 | 小雪さん | 2000年代後半 | シンプル&クールな路線 |
5代目 | 松下奈緒さん | 2014年 | イメージ刷新期の起用 |
6代目 | 高畑充希さん | 2015年~ | 親近感のある新シリーズ |
※2018年に滝川クリステルさんが出演するCMが放送され話題になりましたが、高畑充希さんが降板してないため、滝川クリステルさんを7代目と呼ぶにはふさわしくないという見方ができます。そのため当記事では滝川クリステルさんはバファリンの歴代CM女優に含めないこととします。
※また、2021年から『バファリンプレミアムDX』のCMには長澤まさみさんも登場しており、高畑充希さんと同様、最新ブランドアンバサダーとしてCMの顔になってます。(6代目CM女優さんが2人存在する形です)
時系列で振り返るバファリンCM女優の歴史
初代(諸説あり):冨士真奈美さん(~1980年頃)- 草創期の顔
※出典が非常に限られていて「地方CM説」の段階で、確認できる映像は少ないですが、一部のファンや広告関係者の証言として名前が挙がっているため、当記事では初期の候補女優さんとして紹介しています。
項目 | 詳細 |
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出演時年齢 | 40歳~50歳頃 |
代表作 | 「男はつらいよ」シリーズ 「時代劇」多数出演 |
CM出演背景 | 信頼感のある母親役として定評 |
特記事項 | 地方CM・一部媒体での出演説あり |
バファリンCM史の出発点を飾ったとされる冨士真奈美さん。当時は現在ほど全国統一のCM展開が一般的ではなく、地域ごとに異なるタレントを起用することも珍しくありませんでした。
冨士真奈美さんは「男はつらいよ」シリーズでの温かい母親役のイメージが強く、家庭薬品のCMには最適な人選だったと考えられます。ただし、当時の映像資料は少なく、出典が限られる部分もあります。
2代目:倍賞千恵子さん(1980~1990年代半ば)- 黄金期を築いた象徴的存在
項目 | 詳細 |
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出演時年齢 | 38歳~53歳 |
代表作 | 「男はつらいよ」シリーズ(さくら役) 「砂の器」 「幸福の黄色いハンカチ」 |
CM出演期間 | 約15年間(最長記録) |
ブランドへの貢献 | バファリン=倍賞千恵子の印象を確立 |
バファリンCMの顔として最も長期間活躍した倍賞千恵子さん。「男はつらいよ」シリーズのさくら役で国民的女優としての地位を確立していた彼女の起用は、ブランドの信頼性向上に大きく寄与しました。
この時期のバファリンCMは、家庭の母親が家族の健康を気遣うというコンセプトが中心でした。倍賞さんの持つ温かみのある人柄が、薬品という商品に対する消費者の不安を和らげる効果を発揮し、「バファリンの顔」と呼ばれる存在となりました。
3代目:中谷美紀さん(1997年~2000年)- 大人の知性と信頼感
項目 | 詳細 |
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出演時年齢 | 21歳~24歳頃 |
代表作 | 「ケイゾク」 「リング」 知的で都会的な女性の代表 |
CM シリーズ | 残業篇・ゴルフ篇など働く女性を描く |
時代背景 | キャリアウーマンの社会進出加速 |
大人の知性と信頼感を前面に打ち出した中谷美紀さんの起用。「ケイゾク」や「リング」などで話題となり、知的で都会的な女性のイメージを確立していた彼女の起用は時代を先取りしたものでした。
中谷さんが出演した残業篇やゴルフ篇などは、働く女性の多様なライフスタイルを描いた画期的なシリーズでした。従来の家庭中心から個人のライフスタイル重視へとシフトした象徴的な作品群となっています。
YouTubeでも確認できる映像が残っており、当時の社会情勢と女性の価値観変化を反映した貴重な資料として評価されています。
4代目:小雪さん(2000年代後半)- シンプル&クールな路線
項目 | 詳細 |
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出演時年齢 | 33歳~35歳頃 |
代表作 | 「ラストサムライ」 「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズ 国際的な活動も展開 |
CMイメージ | シンプル&クールな演出 |
ブランド戦略 | 洗練されたブランド訴求 |
シンプル&クールな路線でブランド訴求を行った小雪さんの起用。「ラストサムライ」での国際的な活躍や、「ALWAYS」シリーズでの日本的美しさの体現により、洗練されたブランドイメージの構築に貢献しました。
小雪さんの持つ凛とした美しさとクールさが、薬品に求められる信頼性と現代的な洗練感を同時に演出する効果を発揮しています。この時期のCMは、感情的な訴求から理性的な訴求への転換を明確に示しました。
5代目:松下奈緒さん(2014年)- イメージ刷新期の起用
項目 | 詳細 |
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出演時年齢 | 28歳頃 |
代表作 | 「ゲゲゲの女房」 「CONTROL〜犯罪心理捜査〜」 若手時代の清楚なイメージ |
起用の背景 | ブランドイメージの若返り戦略 |
CM の特徴 | 従来の母親像から若い女性へのシフト |
2000年代前半のイメージ刷新を担った松下奈緒さん。若手女優として注目を集めていた時期の起用で、バファリンブランドの若返り戦略の先駆けとなりました。
松下さんの持つ清楚で知的なイメージが、従来の家庭的な母親像から、現代的な若い女性へのターゲット拡大を効果的に演出しています。この時期から働く女性層への訴求が本格化したのです。
若手時代での起用により、バファリンは新しい世代の女性にも親しみやすいブランドとしての印象を構築することに成功しました。
6代目:高畑充希さん(2015年~)- 親近感のある新シリーズ
項目 | 詳細 |
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出演時年齢 | 25歳~ |
代表作 | 「とと姉ちゃん」(NHK朝ドラ主演) 「過保護のカホコ」 ミュージカル女優としても活躍 |
キャッチフレーズ | 新しいブランドメッセージを体現 |
ターゲット層 | 20~30代の働く女性 |
親近感のある新シリーズを開始した高畑充希さんの起用。朝ドラ「とと姉ちゃん」で国民的人気を獲得した彼女の持つ親しみやすさと現代性のバランスが、新しい時代のバファリンイメージを効果的に演出しました。
高畑さんが出演したCMでは、従来の重厚感から軽やかさへのシフトが顕著に現れています。ミュージカル女優としての表現力を活かした演技で、頭痛薬のCMでありながら明るい印象を与えることに成功しました。
全国キャンペーンCMとして展開されたこのシリーズは、バファリンブランドの新たな方向性を明確に示す重要な転換点となったのです。
番外編:滝川クリステルさん(2018年)- 清潔感で新印象付与
一部では“7代目”と誤解されることもありますが、正式にはこの時期も高畑さんのシリーズが続いており、単発起用のため代目扱いには含めません。
項目 | 詳細 |
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出演時年齢 | 40歳 |
代表的な活動 | フリーアナウンサー 東京五輪招致プレゼンテーション 国際的な知名度 |
起用の背景 | キャスター出身の清潔感を活用 |
CM の特徴 | TIME IN A BOX キャンペーン |
キャスター出身の清潔感で新たな印象を付与した滝川クリステルさん。東京オリンピック招致での「おもてなし」スピーチで国際的な注目を集めた彼女の起用は、バファリンブランドの現代的なイメージ刷新を狙った戦略的判断でした。
「TIME IN A BOX」キャンペーンでは、働く現代女性をターゲットにした路線変更が明確に現れました。滝川さんの持つ知的で洗練されたイメージが、バファリンの新しいブランドアイデンティティ構築に貢献したのです。
国際的な活動経験を持つ滝川さんの起用により、バファリンは単なる家庭薬から、現代社会で活躍する女性のパートナーとしてのポジショニングを明確にしました。
番外編:長澤まさみさん(2021年~現在)- 『バファリンプレミアム』最新ブランドアンバサダー
6代目の高畑充希さんはまだ降板してませんが、2021年から長澤まさみさんが『バファリンプレミアムDX』のCMに起用され、最新のブランドアンバサダー的存在として活躍されてます。(バファリンルナi、バファリンEX、バファリンAのCMには引き続き高畑充希さんが出演してます)
https://twitter.com/bufferin_pr/status/1455082270683922434
項目 | 詳細 |
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出演時年齢 | 36歳~現在 |
代表作 | 「世界の中心で、愛をさけぶ」 「ガリレオ」シリーズ 「コンフィデンスマンJP」 幅広い年代に支持される国民的女優 |
CM戦略 | ブランドの継続性と若返りの両立 |
現在の評価 | バファリンの新たな「顔」として定着 |
10代から30代まで幅広い年代に支持される彼女の起用は、ブランドの継続性と若返りを同時に実現する絶妙な人選と言えそうです。
長澤さんは映画「世界の中心で、愛をさけぶ」でブレイクして以来、常にトップクラスの人気を維持している稀有な女優です。その安定した人気と親しみやすい人柄が、バファリンブランドにとって理想的なイメージキャラクターとなっています。
最新のCMシリーズでは、従来の薬品CMの固いイメージを完全に払拭し、日常生活に自然に溶け込む頭痛薬としてのポジショニングを確立しています。長澤さんの自然体な演技が、この新しいブランドイメージの浸透に大きく貢献しているのです。
バファリンCM戦略の変遷と評価
時代とともに変化するターゲット層
時代とともに変化するターゲット層が、バファリンCM戦略の最大の特徴です。初期の家庭重視から2000年代の多様化期を経て、現代の統合的アプローチへ、そして社会情勢の変化を敏感に捉えた戦略転換が功を奏しています。
特に注目すべきは、歴代の女優さんそれぞれが時代を象徴していることです。倍賞千恵子さんの家庭的な安心感から、中谷美紀さんや小雪さんの知的で洗練されたイメージ、そして長澤まさみさんの親しみやすい自然体まで、時代ごとの理想的な女性像を体現する人物を選定する眼力が、長期的なブランド価値向上につながりました。
- 時代性の的確な把握 – 各時代の女性の価値観や生活スタイルを反映
- 信頼性の継続 – 薬品という商品特性に適した安心感のある女優を選定
- ブランドイメージの一貫性 – 変化の中でも核となる価値を維持
- 適切な出演期間 – 長期起用と適度な世代交代のバランス
- 社会トレンドへの対応 – 働く女性の増加など社会変化を先読み
ブランドイメージの継続と革新
ブランドの核となる「信頼性」を維持しながら、時代に合わせて表現方法を変化させてきた点が、バファリンCM戦略の秀逸さを物語っています。薬品という商品特性上必要な安心感を損なうことなく、現代的なアプローチを取り入れてきました。
特に長澤まさみさんの起用以降は、「薬らしくない薬」としてのポジショニングが確立されています。従来の重厚で医療的なイメージから、日常生活に自然に溶け込むライフスタイル商品としての訴求に成功しているのです。
競合他社との差別化戦略
他社が機能性や価格で競争する中、バファリンは一貫してブランドイメージと感情的なつながりを重視した戦略を取ってきました。この差別化アプローチが、長期的な競合優位性の源泉となっています。
特に頭痛薬市場では、効果の差が消費者には分かりにくいという特徴があります。そこでバファリンは、商品の機能ではなく「安心感」「信頼感」というブランド価値で差別化を図り、見事に成功を収めているのです。
バファリンCMシリーズの総合評価
40年以上にわたる一貫したブランド戦略の成果として、バファリンは日本の頭痛薬市場において揺るぎない地位を確立しています。初期の冨士真奈美さんから現在の長澤まさみさんまで、8人の女優がそれぞれの時代のバファリンの顔として活躍してきました。
特に中谷美紀さん以降の多様化期間では、松下奈緒さんや小雪さんなど、商品ラインナップや時代背景に応じた細分化された戦略が展開されました。この柔軟性が、ブランドの持続的な成長を支えてきたのです。
- 時代性の的確な捉え方 – 各時代の女性像と社会背景を反映した人選
- 長期視点でのブランド構築 – 短期的な話題性より持続的な価値創造を重視
- 感情的価値の重視 – 機能性訴求を超えた安心感・信頼感の構築
- 一貫性と変化のバランス – 核となる価値を維持しつつ表現を現代化
- 競合との明確な差別化 – 独自のポジショニング戦略による優位性確立
現在も進化を続けるバファリンCM。長澤まさみさんの起用により、新たな時代のブランドイメージ構築が進んでいます。今後も時代の変化に対応しながら、さらなる進化を続けていくことでしょう。
このように、バファリンのCM戦略は日本の広告史においても特筆すべき成功事例として、多くの企業にとって参考となるモデルケースなのです。